高橋博の「自然がなんでも教えてくれる」| 第12話 突いてばかりいるだけじゃなく、引いてみる

高橋博さん

『マーマーマガジン』20号の農特集でお届けした、自然栽培を続ける、高橋博さんのお話。21号からはじまった連載を、マーマーな農家サイトに場所を移して続けていきます。高橋さんの語り口調そのままにお届けします。
構成=服部みれい/再構成=松浦綾子

第12話 突いてばかりいるだけじゃなく、引いてみる

農業も、あるときを境に、一気に変わらないといけない。そんな転換点がいつかくるかと思うよ。世の中が太陰暦から太陽暦に変わったように、ガラッと変わるんじゃないかってね。あれも本当は一気にではなく、徐々に変わっていったんだけどね。
心理学的な勉強をしたときに、突引き(つきひき)っていう言葉を知ったんだ。今まではたいてい「突きっこ」なんだよ。上の人が下の人に付いて(突いて)あげている。先生も生徒の数に対して少ないでしょう。
昔は太陰暦で月(突)の時代だったけれど、太陽暦になってからは、陽(引き)の時代だろ? なのに、その変化に対応できずに昔のやり方でやっているから、うまくいかないんだよ。突いてばかりいるだけじゃなく、引いてみると、意外とうまくいくんだ。そういう時代にはいっているんだから、そうすべきなんだ。

いつも突いているやつが引いてみな。あまり引かれると、突かれているほうも、「ちょっと待って」となってしまうから(笑)。世の中はそういう時代になっているんだからね。そういう「突引き」の考え方は、いろいろな世界で使えるよね。わたしはそれを農業に活かしただけで、そのほかの分野……、たとえばお医者さんの分野でも、政治の世界でも、学校でもつかえると思うよ。

わたしがたまたま小学校のPTA会長をやることになったときに、「PTAってなにをやってんだろう」と思ったわけだよ。「かあちゃんたちは先生を超える集まりか?」なんてふうにね。それで自然農法の原理原則でこのあり方を少し変えてみたら、うまくいった。自然農法の原理原則は、人間関係や組織にも使えるんだよね。だから河名(秀郎 ナチュラル・ハーモニー創業者)さんは、それをナチュラル・ハーモニーの経営に活かしているわけだ。

世の中のひとはみんな、人との付き合い方、教え方でひっかかっているよね。いまも元研修生が研修生を預かっているんだけど、「高橋さん、参っちゃうよ〜」っていってくるわけ。だから、「お前、なに勉強したの?」って。「あなたはいつでもなんとかしたい、なんとかしたい、って自分でやっていっちゃうタイプだろ? それじゃ相手が引くよ。今度はしばらく言葉をかけなかったらどう?」って。それで向こうから「なんとかしてください」って来たときがチャンスだ。そうしたら、今度は聞いてもらえる。相手も聞く体勢になっているからね。

だけど、それはいくら勉強していても、いざ現場にはいってみると使えなかったりするんだよね。それはすごくわかる。新規就農でやってきた子がいるんだけど、その子は悩むと青白い顔してうちにくるわけだ。「今年の作物はオバケみたいになってしまって……」って。だからやっぱりそこでも、毒抜きの重要性を説くわけだ。30何年間、同じようなことを続けているよ。

高橋博(たかはし・ひろし)

1950年千葉県生まれ。自然栽培全国普及会会長。自然農法成田生産組合技術開発部部長。1978年より、自然栽培をスタート。現在、千葉県富里市で9000坪の畑にて自然栽培で作物を育てている。自然栽培についての勉強会を開催するほか、国内外で、自然栽培の普及を精力的に努めている。高橋さんの野菜は、「ナチュラル・ハーモニーの宅配」にて買うことができる。
http://www.naturalharmony.co.jp/takuhai/

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