高橋博の「自然がなんでも教えてくれる」| 第9話 自然流だと、最後はちゃんと実りがある

高橋博さん

『マーマーマガジン』20号の農特集でお届けした、自然栽培を続ける、高橋博さんのお話。21号からはじまった連載を、マーマーな農家サイトに場所を移して続けていきます。高橋さんの語り口調そのままにお届けします。
構成=服部みれい/再構成=松浦綾子

第9話 自然流だと、最後はちゃんと実りがある

自然っておもしろいだろ? 自然農法は無料でこのおもしろさを体験できるんだから最高だよ。うちのかあちゃんなんて20年間ずっと反対していたけれど、「もう講師になれるぞ」っていうくらい詳しいよ。「お前、あれだけ反対していたのに、ここまでになったか」って思うくらい、芯からの話ができるようになった。離婚届けをもってくるほど反対されていたけど、実証があったから、「本当だ」となったわけさ。いつかうちのかあちゃんがどこかで講演することもあるんじゃないかな。農家の妻であるということにはどんな悩みがあるかとか、そういう話ができるじゃない。

うちのかあちゃんだったから、わたしはやってこられたんだよ。強い女で、家庭をちゃんと守ってくれたからな。12年前に家を建て直せたのも、かあちゃんのおかげ。貯金の額からしたら万全ではなかったんだけど、もうボロボロで子どもたちも友だちを家に呼べないほどだったから、ちょっと借金して、建て替えることができたんだよ。土地を売ったとかじゃなく、農業だけでだよ。持参金を削りながら生活していた頃もあったというのにね。
うちのメンバーが言うのは、「自然農法だけで家を建てられたのは、高橋さんのところだけ。だから力になる」って。「ちゃんとやっていれば、たとえ一般ほど収量があがらなかったとしても、なんとかなるんだ」って思ってくれる。まぁ、それでも贅沢は控えたよ。最初の頃は車もポンコツで、2〜3万円で友だちから買ったのに乗ってた。うちのかあちゃんは実家に帰るのに坂道を登らなくちゃならないんだけど、おばさんを乗せると、その車は重くて坂をあがれないんだって。おばさんに「降りて押そうか?」って言われるほどの車に乗っていたんだから。

農家っていうのは意外と付き合いが多いから、そういう出費もあった。家のなかの出費を詰めるしかなくて、親戚から「絶対に貧乏するぞ」なんて馬鹿にされたりもして、それはすごく辛かった。当時はまだ俺も理屈は達者だったけど、事実をだせていなかったからね。最初の10年くらいは大根も「小根」だったりして、売りものにならない野菜ができちゃうの。それでも食べてくれる消費者がいたから助かっていたけど、いまだったら廃棄されるレベルのものだよ。
親にも「世間がみてるじゃないか、みっともないからやめろ」とか厳しいこともいわれたね。それでも、「早いもの勝ちだ。早く毒抜いたほうが勝ちだ」って思っていたから、一般の農業をしていた分でなんとか収入をたてて続けてこられた。かあちゃんも、本当にピンチになったときはもう割り切ったといっていたね。お金が最低限なんとかなって、子どもたちに将来をかけて、俺はいないくらいのつもりで生きよう、と。そのうちに収入がたつようになってきたのよ。

世間から見て苦しそうなことも、わたしには楽しかったよ。わたしはいつでも、なにか問題が起こることを待っているんだ。試してみたいんだよ。自然の原理原則で解決してみたいんだ。だから、世間流の問題がでてくることが、いまは楽しい。自然にとってみれば簡単なことなのにね。まだまだ勉強したいなぁ、と思っているよ。そういうふうに変わった姿を、かあちゃんは認めてくれたんだろうな。

彼女もすごく穏やかになった。前はすごく強いというか、キツい女だったよ。きっとそうじゃないと生きられなかったんだろうね。最近は親戚にも「本当に穏やかな顔になったねぇ」と言われていたもの。そうじゃないといけないよな。本物を続けていれば最後はいいようになる。最後の最後まで苦しんで終わるものは、嘘だから。自然はそういうふうになっているの。人間流は苦しみで終わるかもしれない。自然流だと最後はちゃんと実りがあるんだよね。種を蒔いて育てるときは嵐がきたり、いろいろなことがあるけど、ちゃんと実はなるんだ。

高橋博(たかはし・ひろし)

1950年千葉県生まれ。自然栽培全国普及会会長。自然農法成田生産組合技術開発部部長。1978年より、自然栽培をスタート。現在、千葉県富里市で9000坪の畑にて自然栽培で作物を育てている。自然栽培についての勉強会を開催するほか、国内外で、自然栽培の普及を精力的に努めている。高橋さんの野菜は、「ナチュラル・ハーモニーの宅配」にて買うことができる。
http://www.naturalharmony.co.jp/takuhai/

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