高橋博の「自然がなんでも教えてくれる」| 第6話 肩こりみたいな症状が土の中で起きている

高橋博さん

『マーマーマガジン』20号の農特集でお届けした、自然栽培を続ける、高橋博さんのお話。21号からはじまった連載を、マーマーな農家サイトに場所を移して続けていきます。高橋さんの語り口調そのままにお届けします。
構成=服部みれい/再構成=松浦綾子

第6話 肩こりみたいな症状が土の中で起きている

自然栽培には80年の歴史があって、昭和初期、全国に普及した時代があったんだ。当時は一般の農業(動物糞尿による)よりも無肥料のほうが収量が上がっているにもかかわらず、国の政策は化学肥料を導入して食糧増産というとき。無肥料なんて認められずに消えていってしまった。
次は昭和50年代にふたたび自然栽培の普及運動がはじまって、全国で実施された。しかし今度は何年経っても収量は上がらず、虫や病気に悩まされるという現状の中で、世の中からまた消えようとしている。原因を追究してみると、そこには半世紀前の土と現代の土に大きな違いがあるんだ。だけど誰もが気づかず、みすみす自然栽培を断念してしまっていたんだよ。

化学肥料を土に入れることで蓄積された、冷たくて硬い土の層を肥毒というんだ。書物では土の肥毒は3年で消えるって学んでいる。それじゃあ原因はなんなんだろうって思って、うちの組合の技術開発にお願いをして、土の中を掘り下げて見てみたの。そしたら、「消える」といわれていたものがまだ「ある」んだよ。冷たくて硬い肥毒がそこに。これが虫・病気の原因であり、収量をあげない原因だとわかったわけさ。それだけなんだ。肥毒がなくなれば収量は有り余るほどとれ、虫や病気はまったくなくなるって自然栽培の本では説いていたからね。

どうしたらいいかっていうことで、いろいろな想定……、土質では火山灰地、砂地、粘土地で肥毒を抜く方法を試して、5年間追跡調査してみたの。そしたらほぼ5年で、これだっていう原因がわかってきた。それをちゃんと解決したら、しっかり成績があがってきた。そこで発表しようと思ったけど、5年じゃまだ確信できないから、もう5年見てみようって結局10年見て。10年で「これでよし!」って確信を得た。先生が亡くなった後だし、どうやってこれを全国に広めようかと考えていた。そんなときに河名(秀郎 ナチュラル・ハーモニー創業者)さんと再会して、「全国から自然農法が消えてしまった原因がわかったよ!」って、みんなに報告することができた。

どの土でも肥毒の抜き方は同じ。基本は固まりになってしまっていて、人間でいえば肩こりみたいな症状が土のなかで起きているんだ。だから土が冴えないの。活力がでてこない。当時、肥毒をどうやって抜こうかとうちの技術開発部が考えたときに、着想を得たのは人間の肩こりを揉んで治すというもの。揉むと悪い血が流れていって楽になるから、「土も揉もうよ」と。はじめは機械で細かく砕いてみたんだけど、やっぱり3年放っておくと元に戻っちゃうんだ。
だから、毒をしっかり出してやらなくちゃいけない。出す方法として自然界はなにをやっているか考えてみたら、それは草木に吸ってもらうことだった。麦や、根の強いものを植えてどんどん吸ってもらったよ。吸ってもらった土はとてもよかった。それでもやっぱり少し肥毒が残ることは想定されるから、何年か後にまた抜こうといって、長いスパンで計画したんだ。肥毒を抜かないと虫や病気はでてくるし、雑草はでてくるし、収量はでないから。肥毒をとったあとは、なんともかんたんだったよ。収量はあがって、虫や病気はなくなるし、雑草もだいぶ少なくなったね。

高橋博(たかはし・ひろし)

1950年千葉県生まれ。自然栽培全国普及会会長。自然農法成田生産組合技術開発部部長。1978年より、自然栽培をスタート。現在、千葉県富里市で9000坪の畑にて自然栽培で作物を育てている。自然栽培についての勉強会を開催するほか、国内外で、自然栽培の普及を精力的に努めている。高橋さんの野菜は、「ナチュラル・ハーモニーの宅配」にて買うことができる。
http://www.naturalharmony.co.jp/takuhai/

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